JazzTimesによる 「Brooklyn Calling」 のレビュー アンドリュー・ハムリン著
ギターを弾く新人のポール・ボレンベック(このバンドにとって)は、リーダーにとって最も身近な表現者です。ボレンベックはキリアンのテナーの後ろで、7曲にわたって謎めいた吸い込まれるようなサウンドを聴かせてくれる。また、キリアンが(アルティシモではない)高音域を演奏する際には、ボレンベックはメロウなベル音を奏でクッションの役割を果たすこともある。キリアン自身のプロデュースによるこのセットは、特にヘッドフォンを通して聴くと、4人の仲間がお互いの後ろに隠れ、そしてその共有空間から彼らの芸術性を覗き込むように紡ぎ出すように演奏されているように聴こえる。私はいつもボレンベックやキリアンにばかり目が行ってしまうと言っている。ところがふと気づくと、ベーシストのコーコラン・ホルトの滑らかな唸りやドラマーのマクレンティ・ハンターのしなやかなスティックさばき、シンバルで広がるドライなジョークに釘付けになっているのです。
テキサス出身のキリアンは、10代の頃父親(キーボーディストのジョー・キリアン)とギグをやっていたが、10年ほど前からニューヨークが音楽活動の拠点になった。彼は昔、ジョーイ・デフランチェスコのバンドでボレンベックの演奏を聴いたことがあり、その時の2人は決して離れられないように生まれてきたようなシンパシーを感じたように見えた。ウイルスがまだアメリカ(世界)に大きな影響を及ぼしているなか、ある日、バッファローでのハイキングを経たサックス演奏者であるキリアンは、ブルックリンのブッシュウィックから同じ志を持つ人々が参加する、クイーンズのリッジウッドでのジャムセッションのために、自分がよく知っている箱に足を運ぶことになる。
リーダーとしての彼はダイナミクスを、しばしば無視されがちな第4の次元(余韻、構造、調和)として理解している。そのため、7分以上に及ぶ「Shibuya Crossing」で、狂おしい美辞麗句が、人間の会話に似た柔らかい雰囲気で、皮肉を込めて聞こえてくる。ホルトは「Concept of Peace」で弓弾きを披露していて、それに対してボレンベックも畏敬の念を込めた演奏で応えている。これぞチームワーク。またしても「トータル」の証とも言えるでしょう。
2022年7月8日発刊